12/17(木)に行われた『リアル脱出ゲームの作り方』というトークイベントに行ってきました。
イベント概要
京都から始まって、大阪、東京で大盛況のリアル脱出ゲーム。
リアル脱出ゲームはどのようにして生まれ、どんなふうに育ち、どんなふうになっていこうとしているのか。
そして、その発想法、運営法、構築のプロセスをリアル脱出ゲーム考案者であり、すべての公演の制作を指揮しているSCRAPの加藤隆生が中心となり語り合います。
また、話はリアル脱出ゲームから派生して、現代の最先端のアナログゲームであるARGまで届きます。あらゆる空間ゲームは物語を内包し、物語は現実を豊かにします。
これがうまくいけば日本中が「面白空間」になるやもしれません。
現実と物語の間を行きつ戻りつふらふら進む「最先端のアナログゲーム」が日本の新しい「あそび」になる様子をなんとかお伝えします。
スピーカー
SCRAP 加藤隆生(代表、編集長)
フリーペーパーSCRAP編集長、ロックバンド「ロボピッチャー」ギターボーカル、リアル脱出ゲーム発案者、くるりARGプロデューサー。 空間を使った謎解きイベントに卓越したセンスを発揮する。あるとき、ある場所をまるで物語の中のように演出するゲームイベントを得意とする。 普段は思いつくままにフリーペーパーを編集したり、陽気に曲を作ったり、飲み明かしたりしている。趣味は働くこと。遊ぶように働いて、あそびを仕事にするのも得意。
http://www.scrapmagazine.com/index.html
今回のイベントはMAGNETICSというプロジェクトのひとつで、他の日にはCBCNETさんが主催のイベントも開催されていたようです。
今回スピーカーの加藤さんのお話は以前行われたARGシンポジウム2009で初めて聞き、その活動に興味を持っていたので、是非話を聞きたいと思い足を運んでみました。
加藤さんのエンターテイメントに対する哲学や、実際の苦労などとても勉強になる会でした。
開場からトーク開始まで一時間ほどあり、その間にちょっとした謎解きをしたあとにトークが始まりました。
以下から、加藤さんの話した内容になります。
リアル脱出ゲームの経緯
きっかけはTAKAGISMのFlash脱出ゲームを遊んだことから。これを実際の空間でやったら面白いのではないかと思ったから。
初回とりあえず開催してみたら、170~180人の人が集まった。
5人づつ程度のグループに分け、一組10分でゲームを行うことに。長蛇の列が出来てしまい、炎天下の中お客さんが「待つイベント」になってしまった。
それだと、待つお客さんがやることがなくなってしまうので、この回では、後の参加者に謎を教えていいというルールに。参加者全員が謎解きを積み上げて、脱出を目指すという形に。
しかし、それでも無事脱出できたのは1~2組のみ。はじめてということもあり、ゲームバランスとしてかなり難易度が高くなっていたとのこと。
その後、学園祭で頼まれたり、ライブハウスでの開催を行ったりして、段々と広がっていくうちに、「チケット制にしてちゃんとやろう!」という流れに。
チケット制にするも、即売り切れの状態になり今度は「2日公演に!」
最近のチケット枚数の推移
- 大阪公演(多分、HEP HALLからの脱出 3)
- 1000枚
- 廃校脱出シリーズ1
- 200枚
- 廃校脱出シリーズ2 〜図工室からの脱出〜
- 600枚
- 終わらない学級会からの脱出
- 700枚
- 東京リアル脱出ゲーム~廃倉庫からの脱出~
- 2000枚!!
何故、こんなに人が集まってくれるかわからないとのこと。
パズルは京大のパズル部出身の人にお願いしたりしている。水平思考問題やなぞなぞについては、普段から意識してネタ集めをしている。
謎については、文系パズルか理系パズルか関係なく、自分が楽しいかどうかを一番大事にしている。例えば、このタイミングでこの謎が出てきたら自分は楽しめるかどうかとか。
全体のストーリーラインの考え方
タイトルで決まる。タイトルが決まったらとにかくそれに愚直に作っていく。
「廃校」「無人島」「洋館」など、オールドミステリーな場所は字面だけで謎の温度が、始まる前から1℃あげることができる。あとは、自分が閉じ込められたい場所を意識する。
1時間という枠の中でプロローグを入れてしまうと時間が足りないので、タイトルをプロローグとして使って、時間を節約している。
「終わらない学級会」「次第に明らかになるこの終わらない学級会の秘密とは」など、言葉が大事。
イベントタイトルを見た時に物語が理解できるようにすることを意識している。
そのための装置として過去の建築物を使うことが多い。
ゲームの難易度について
基本的に「自分のことを頭が悪くない」と思っている人は多い。
昔のファミコンのゲームは難しかった。その中でもディスクシステムのアドベンチャーシリーズは秀逸だった。
でも、最近のゲームは謎を解くことが前提になっていて、つまらない。感想が「簡単すぎたなぁ」になってしまう。
自分にとって丁度いい難易度。それは、必ず解けなくてもいいもの。それが解けたときの快感が大事。
リアル脱出ゲームを企画すること
フリーペーパーの謎特集のイベントを考える際に生まれた。女の子に最近どんなことにハマってるか聞いて帰ってきた答えが「脱出ゲーム」。じゃあ、それのイベントをしよう。
そんなノリで決まった。
競合が出てこないのは、明確に儲からないから。
このイベントは沢山のボランティアスタッフの協力とメインスタッフの心血を注いだ結果として成立している。
沢山の企業が結果としてビジネスにならないと判断して、やらない。
広告やアトラクションのひとつとして企画を求められることは多いが、「人のお金で遊ぶのはこんなに大変なのか」というのもひとつの感想。
ARGについて
こういうのがビジネスやプロモーションになることは純粋にうれしい。
でも、今はリアル脱出ゲームというエンターテインメントを作るほうが大事。
今企画されているのはプロモーションばかりだから、ARGが純粋なエンターテインメントとして定着するのは時間がかかるだろう。
お客さんの傾向
東京の女性はキレイ。
東京の方が「自分は頭が悪くはない」と思ってる人が多い。だから、最初は見にまわる人が多い傾向にある。一方大阪なんかは、開始すぐに机をひっくり返したりしていた。
でも、基本的にはどちらも大差はない。
まず、考えることに抵抗がるひとは来ない。
「この問題解ける?」って言われて、温度が上がる人が来る。
謎解きイベント界では、2000という数字はすさまじい規模だから、結果を見ると時代に受け入れられたとも言える。
レイトンが売れたのは大きかった。そのおかげでパズルが大衆化された。
そこに、自分は身体を使って向き合うものを作った。
パズルだけでも、ストーリーだけでも、インタラクティブだけでも、ダメ。
客層は6:4で女性が多い。レイトンも女性ユーザーが多いそう。
司会として自分が前に出ることについて
自分がやれるからそうしているだけ。
自分が一番何を伝えるべきかわかっているから。
当初の目標
BankARTが目標だった。でも、達成してしまった。
まるでゲーム(物語)に入ったような体験がリアル脱出ゲームの醍醐味だが、人数が増えるとそれが1/100に薄まってしまう。
さすがに1/200や1/300の規模では参加者がそういう体験をするのは難しい気がしている。
2000人のあとは、減らそうと考えている。とりあえず2000人という数字を一度身体に入れたい。
そうすれば、きっと次が見えてくると思う。
リアル脱出ゲームのつくり方
条件を確定する
- どこで
- 規模(人数、制作期間)
- 予算
まず、上記3つをかっちり決めるのが一番大事。
場所が決まってくると、設定やアイディアが出てくる。
例:廃校 => 図工室-切り貼り、お絵かき 学級会 など
「音楽」室、「理科」室は拒否反応を起こす人がいるので採用はしなかった。
面白そうなタイトルを決める
どんな公演かわからないからこそ、タイトルで理解できるようにすることが大事
脱出ゲーム好き。ノスタルジック好き。ホラー好き。
そんな人たちがなんとなくワクワクしてくれるように、面白いことが起こりそうなタイトルをつける。
「面白い」より「面白そう」の方が偉い
リアルRPGの場合、既にある「RPG」の文脈があるのでそれを利用できた。
手の甲に紋章。「はじまりの宿屋」など、既知の設定を利用。例えば、「はじまりの宿屋」では物語のはじまりと冒険する仲間との出会いがある。既知の設定を利用することで説明が不要になる。
知っているけどやったことないことをやれることが夢みたいに重要。
閉まる扉に走っていてギリギリですり抜けるとか。暗視スコープで見える赤外線の線をかいくぐるとか。そういった状況を実現してあげる。
(赤外線は実際には線に見えないから、概念の線と実存の線をふたつ重ねて出し、可視化させた。)
ラスト10秒で奇跡的な閃きにによってみんなが救われる。その体験を実現させてあげる。
謎を並べる
ストックしておいた断片的な謎を設定に沿って並べていく。
どこかで見たことある体験ができる謎がいい。パズルだけではダメで、もっと体感して解けるものがいい。
パズルは解けると、解き終わった安堵が残るけど、身体を使わせると謎がつながった際に快感が生まれる。
最後にサプライズを考える。謎が出揃い、並べ終わったら、とにかくびっくりすることを入れ込む。
そして、辻褄が合うように謎を組みあわせていく。
謎を並べて90点、最後の10点をあげる作業として演出・サプライズを考える。
進行表を作る
進行表にしてまとめる。
その進行表をいろんな人に見せて、徹底的なヒアリングを行う。
このときに誰かが面白くないと思う要素があったら、その要素はバッサリ切り捨てるようにしている。
こうして、いろんな人の生の感覚を集める。
発注
デザイナー、パズルクリエイターに発注する。
デバッグ公演
この時点では面白くないといっても過言ではない。
このときには致命的なミスでゲームを止めることもある。
公演後20時間でかなりの部分を作り変える。
デバッグ公演で実際に人を中に入れてみることで、やっと頭が動き出す。
そして、翌日に完成。
質問タイム
アイディア出しの体制について
アイディアだしは4~5人。パズルを考えられる人が1~2人。
女の子の視点は入れるようにしている。
制約された場所で考えることに価値を感じている。
現実が舞台の場合は、制約がなさすぎる。
どんなものでも何かすれば、何かが出てしまうから。
むしろ、どうやって制約するかを考えることが多い。
謎の量について
ゲームの尺から逆算
集客方法について
チラシ + フリーペーパー程度。特別な広報はしていない。
自分が少しでもワクワクするものを選び続けるようにはしている。
謎解きへのリアルタイムでの時間調整術
本来は70~80分程度で解けるように設定してある。これを60分で解かされている。
30分くらい進行が遅れていると感じると、司会がヒントを出して調整することもある。
ヒントについてはその場で思いついたものを言っている。
早く解かれてしまうのはどうしようもなく、30分程度で解かれてしまうこともあった。
ARGについて
ARGという手法に共感してくれるのはまだ数千人程度ではないか。
感情移入ができるキャラクター像がいないと厳しい。
ARGがきちんとプロモーションとして機能するには、もうひとつ感情移入するための装置としてのフィルターが必要。
まだ、今の日本人は自分のままの状態でものごとを体験したい。
モチベーションをいかに作るかが難しい。
Why so serious?は、そもそもメイクするといった参加のハードルが社会的に低かったということもある。
リアル脱出ゲームの特徴
ゲームよりも演劇の作りに似てる。
1日目と最終では公演内容がずいぶん違っていることが多く、
いろいろと途中で手を加えられる点は多い。
パッケージ化について
パッケージ化して他社に売ったりとかはまったく考えていないわけではないが、なんというか寂しい。
自分達が作ってきたものを手放して人に渡したくない。
最後に
リアル脱出ゲームを思いつけて実現したことをすごく誇りに思っている。
物語が現実になったときに、現実が豊かになる。
そこからまた物語が生まれる。
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